優秀な焙煎器具「煎り上手」の進化系

珈琲焙煎はちょっとした化学実験である。実験の結果は、焙煎豆という見える形で出てきて、最終的にはそれを粉にしてコーヒー液に抽出して味わうことで、その実験がうまくいったかどうか判断するわけであるが、話はそう簡単ではない。というのも、コーヒーの味の感じ方や好みは個人差がとても大きいからである。特に苦み成分を複雑に多数含むコーヒーの場合、旦部幸博氏によると、ある種の苦みを強く感じる人もいれば、全く感じない人もいるということなので、もう好みとかいうレベルではなく、味わっているモノ自体が異なるといってもよいかもしれない。

それはさておき、珈琲焙煎を自分で操れるようになると自分好みの味を作ることは出来る。自分好みの珈琲豆を、あちこち出掛けたり、ネット上で探し回るのは楽しいが、一つの珈琲生豆から驚くほど多彩な味を作れることを知ると、だんだんと闇雲な飲み歩きはしなくなる。自分がそうであった。

ということで、本題の家庭焙煎である。家庭焙煎はもうちょっとしたブームであり、例えば焙煎や焙煎機に関するFBグループを検索すると世界中には驚くほどたくさん存在することに気付く。一番お金を掛けない方法としては、100均などで売っている安価な手鍋やフライパンを使う方法や、小さな手網を使う方法があるが、ほとんどの人は直感の世界で焙煎しており、毎回上手くいった、いかなかった、という結果だけに一喜一憂しているのではないであろうか。 この場合、たとえ千本ノック的に焙煎しまくったとしても、毎回狙った味を出したり、前回と同じ味を再現するのは最後まで難しい、というか理論的に不可能である。

そこで僕が考えているのは、小さな焙煎器具にも科学的アプローチを加えることで、短期間で焙煎を理解して、根拠を持った焙煎で味作りが楽しめるようにできないか、ということである。

煎り上手+温度計
<温度計付き煎り上手>

煎り上手+Artisan
<Artisanロガーが動作しているラズパイを接続した煎り上手>

Artisanグラフ+煎り上手
<煎り上手で焙煎したときのプロファイル例>

今手始めに実験しているのが、発明工房の「煎り上手」の進化版で、一つは柄の部分にデジタル温度計を差し込んだバージョンで、これだけでもかなりのことができるようになる。もうひとつは、Artisanロガーにつながるバージョンで、こちらが本命、これがあれば、文字どおり短期間で焙煎のなんたるかが学べると信じている。

この仮称「焙煎見える化キット」付の煎り上手と、厳選した練習用、ステップアップ生豆セットを使えば、一か月後には誰でもちょっとした焙煎師になれるとしたら如何であろうか。なにしろ焙煎は、焙煎機の種類や手法で捉えると無数に方式があってどれがよいのやら難解を極めるが、焙煎プロファイルという本質で捉えると、焙煎方式、器具だけでなく、バッチ量ですらあまり考慮しなくてもよくなる。純粋に化学実験的に理解できたなら、将来本格的な焙煎機に進んだとしても、それも直ぐに理解できのではないだろうか。

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