台風21号と22号の合間を縫って、北九州に住むコーヒー友達と九州コーヒーとグルメの旅に出掛けてきた。
今回、絶対に行きたかった店は2つ、鹿児島のパラゴンと熊本の珈琲アローである。
あとは小坂章子さん著の「九州喫茶案内」などを参考に道中寄れそうな店をチョイス、さらに地元の方からの情報なども取り入れて、大変充実した3日間の旅となった。
30年以上も前から一度行きたいと憧れていたパラゴンでの感動は個人的な話になるので割愛するが、昼の部(静かなジャズ喫茶)と夜の部(パラゴンのFull Volume)を経験して、これが旅のハイライトであったことは間違いない。ついでながら、持ち帰ったマンデリンは、2ハゼから1分ほどで寸止めするフレンチ直前のフルシティとのことで、実際、ストレートで飲んで苦すぎることもなく、なんとも円やかで実に美味しい。その珈琲を飲みながらこれを書いている。
さて、今回の本題は噂の珈琲ジロー、じゃなくて珈琲アローである。既にいろんな方がブログや動画に挙げてはいるものの、店主が店を畳んでしまう前に何とか自分で確かめに行きたかったのである。
まず意表を突かれるのはその場所で、沢山の人々で行きかう商店街の片隅にある。そして想像していたよりずっと小さな店であった。もちろん駐車場なんてものはなく、少し離れたコインパークに駐車してやっと辿り着いた頃には辺りは飲み屋街の様相。コロナ禍前は9時まで開いていたらしくGoogle mapではそうなっているので、のんびりと8時少し前に訪れたら、なんと今は8時までということで、店じまい直前、間一髪で飛び込んだ。
幸い店主は快く我々3人を受け入れてくれて、例の珈琲を頼むことができた。特にメニューなんてものはないようで、珈琲を飲ませてください、といったら、いきなりポットにネルをセットして淹れ始めてくれた。
百聞は一見に如かず、ということでまずこちらの動画を見てほしい。
あまりにユニーク過ぎて、もう呆然としてしまった。
如何であろうか。そして出てくるのがこれである。皆がコーン茶と言っているやつである。
抽出は、お手製のネルに大匙4杯ほどの白いコーヒー粉をいれたところに、グラグラに沸いたお湯をポットにたっぷり入れて、その全量を3分半ほどかけて、ぐるぐる回しながら一投で注ぐ。これでどうやら5,6杯分らしい。
淹れたコーヒーを、当たり前のように店主もカップ一杯分を取り分けて飲んでいたが、一日に30杯も飲む、という意味が分かった気がした。どうやら30組のお客が来れば30杯飲む、ということらしい。
抽出後の粉の様子もしっかりと見せてくれるサービス精神が嬉しくなる。
さて、嬉しくなったところで2杯目を注文したら、ポットに残っていたコーヒーをそのままカップに注いでくれた。
なんともまったりと仄かに甘く薄い味。確かにこれなら一日に何杯でも飲めそう。
店主曰く、日本だけでなく世界中からこのコーヒーをどうやって作るのか訊きに来るとのこと。うん、分かる分かる。
これは飲んでみるしかない味。88歳という店主のシミ一つない綺麗なお顔を拝見すれば、この薄茶のようなコーヒーには老化を遅くする作用があること間違いない。抗酸化作用で注目されているクロロゲン酸が通常のコーヒーの3,4倍も入っているというグラフも見せてくれた。このコーヒーを飲んでいると一日中の立ち仕事でも足が全くむくまないとのこと。
焙煎方法とかはもちろん教えてくれないが、まず素材が違う、ということを強調されていた。曰く、安い緑茶を頑張って淹れても、高級な緑茶にはならない、といった話。あと熊本の水は世界一ともいっていた。確かに蛇口からの水なのに、臭みもなく甘露水のように柔らかい。そして、いったいどんな豆を使っているのか知りたくなるが、そこは企業秘密、「ブレンドしている」とだけは答えてくれた。
ちなみに、ご高齢の店主の熊本弁は少々滑舌が悪くなっておられることもあり大変聞き取りにくい。そして絶え間なくお話しされるので、質問を挟むことも難しく、一方的にお話されるのを必死で聞き取ろうとするばかりであった。
2杯目
最後に珈琲豆を買って帰ろうと聞いてみたら、珈琲豆は500gで5500円とのこと。けっして高いとは思わないが、ネット通販でも買えることが分かったこともあり、つい見送ってしまった。
実は自分でも以前に同じような超浅煎りの白いコーヒー(White Coffee)を焙煎してみたことがあるが、そのときは鋭い刃を備えているZProでやっと挽くことができた。で、アローさんはどうかと言えば、なんと喫茶店の定番、みるっこ R-440を使っていた。こんな固い豆が挽けるとはちょっと驚きだ。
ちなみに味も自分で作ったものとそっくりであった。
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