生豆の保管について,SCAJセミナーからの考察

今年もSCAJに参加してきた。

コーヒー・ブームの裾野が広がり、飲み歩き、器具の収集、自宅抽出、焙煎とつき進む熱心なマニアも年々増えてきて、一般の方が湯水のようにコーヒー関連にお金をつぎ込む様は、まさに「おたく」カルチャーの1つとなった証なのか。そして、これに応えるかのように、SCAJはどんどんと消費者よりの展示会になってきているように思う。

今回は平日3日間の展示後、土曜日にコーヒービレッジのみ残すという新たな試み。これなら週末しか休めない会社員でも「SCAJに参加したぞ」気分になれるということか。初日はコーヒービレッジはまだ存在せず、その場所は業者向けの各種セミナー会場であった。どうやら初日は業者向けの一日という設定らしくなるほどその手があったか、と思った次第。

僕が参加したのは最初の2日間だけであるが、実に多くのものを目にしたり試飲したりした中で、今回はUSフーズのブースで行われた石光商事さんのセミナーについて取り上げたい。


テーマは昨年と同じ「コーヒー生豆の受入検査と品質管理について」であったが、昨年やったハンドピックのデモと体験(動画参照)は今年はなく、講師の説明の後は、雑味の有無を比較する2種のコーヒーを試飲する、という趣向であった。雑味の種類は微かなリオ臭で、正常品と飲み比べれば違いがハッキリ分かるが、これだけ出されたら普通に飲んでしまうレベルのものであった。この欠点は生豆の時点では判別不能なもので、焙煎後のカッピングで初めて判別できる。このようなサンプルを用意できるとは、さすが生豆商社である。


前置きが長くなったが、まず下記のスライド「倉庫での生豆保管時の水分量の変化のグラフ」を見て頂きたい。特に常温倉庫Bではなんと夏場と冬場で6%ほど水分値が増減している。これは1Kgあたりに換算すると 60gとなり、なかなかとんでもない変化量である。

さて、生豆は大量に買うことで単価が安くなるし、良い豆はすぐに売り切れるので多めに確保しておきたいわけだが、買い過ぎると1年以上も自分で保管することになり、今度は劣化のリスクを負わなくてはならない。

セミナーでは空気、水分、高温、光を避けて保管しなさいと説明する。生豆は比較的保存に強いとはいえ、確かに夏の高温・多湿に対して対応を怠ると数か月でふやけて、フレーバーも著しく劣化してしまう。また冬場の乾燥で10%を切ったりすると、恐らく生豆が割れたりカサカサしてしまったりするだろう。

ということで僕は購入した生豆はすぐにZiplockに1Kgずつ小分け密封して冷暗所に保管することで少なくとも湿気と日光からは守るようにしている。生豆は下記写真のようにしばらくすると勝手に脱気するが、これは袋に残っていた空気(窒素、酸素、水蒸気等)を生豆が吸収してしまうからなのか、、しかし窒素まで吸収するとは思えず、ちょっと不思議な現象である。

特に大事な生豆にはさらに脱酸素剤を封入したり、真空パックにしてからさらにZiplockに入れたりもしている。ちなみに食品用の脱酸素剤は安いからと大袋を買ってはいけない10個くらいずつ小さくパックされているものを購入し必要数を使用したら、すぐにシーラーでまた封印することで最後まで使い切るのが得策だ。

以前「増える生豆」というブログに書いたが、Ziplockはかなり湿気の混入を防いでくれるとはいえ、やはり多少は入るようで、密封したときには 1000.0g と 0.1gまで計って厳密に1Kgを入れるのだが、数か月後、使用前に再度計ってみると下記の写真のように大抵は3-4g増えている。

これをパーセンテージにすると0.3-0.4%であり、温度変化はさておき、水分量の管理関しては、Ziplock保管は生豆倉庫の保管よりも優秀であるともいえる。


USフーズにはブラジル・プレミアム・ショコラという看板商品があるが、去年買ったプレミアムショコラが少し残っていたので、今回改めて計測してみたらやはり3.7g増えていた


この豆を先日たまたま、お湯洗い焙煎した際に、かなり浮き豆が含まれていることが判明して、保管中に劣化したのか気になっていたが、この数値であればさほど劣化したとも思えない。

ただ、会場で展示していた2023年の New Cropを見ると、やはりグリーンが濃く、手に持つと適度な密度も感じられて浮き豆はずっと少なそうに思われたので、もし手元の生豆も最初はこの状態であったとするとやはり少々劣化しているのかもしれない。

ただし焙煎した限りでは、フレーバーの劣化は特に感じられないのである。

僕の経験では、ブラジルのナチュラル精製の生豆は特に劣化しやすいように思われる。一方で、水洗式の生豆は一般的に多少ラフな保管でもなかなか劣化しない。この違いを生むのは、やはり生豆の密度の違いなのだろうか。

特に保存に気を遣うアナエロビックの高価な豆などについては真空パックにしているが、これが最善なのかどうかは分からないが、これをもし冷蔵庫の野菜室で保管したなら恐らく最強の保管方法となるだろう。(もちろん僕はそこまではしない ^^)

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