Scott Raoの焙煎理論の実践比較

Scott Raoの著作、THE COFFEE ROASTER’S COMPANIONCOFFEE ROASTING – BEST PRACTICE- を読むと、全編を通して主張していることは以下の一文にまとまる。

For the vast majority of the world’s roasters, achieving a steadily declining ROR and a 20%-25% DTR were revolutionary ideas that improved their average roast quality.

1) 投入から排出まで一貫してROR(温度上昇率)をスムースに下げ続けること
2) FC開始から排出までの時間(Development Time)を、全体焙煎時間の20-25%にする

彼はこれの科学的根拠は示せていないが、多数の焙煎機を経験して、何百というロースターを指導してきた結果、統計的にそうなる、と演繹法的に述べている。そして、こういったプロファイルを安定的に得るためにはどうすればよいか、ということを2冊の本に延々と記述しているわけであるが、ちょっと現実的ではないことも要求しており、実際にやろうとするとそう簡単にはいかない。Rao氏もこの理論は浅煎り~中煎りまでには当てはまるが、それ以上深い焙煎は検証できていない、と白状している。

そこで0か1かのレベルで完璧を目指すのではなく、理想形に近づけるという考えに切り替えている。特に「煎り上手」のように外気が常に流入する形状の焙煎器具では、そもそも安定した温度測定は不可能で、グラフの波打ちを頭の中でスムージングしながら、実際の豆温度を推定するしかない。

さて、今回はちょうど横浜のカフェに納めるブラジル500gを3バッチ焙煎する中で、焙煎指数は一致しているのに、明らかに感じる香りの違いが出ていたため、7gずつサンプルを取っておき、それらのプロファイルを検証してみた。

Brazil_Samples_焙煎豆

焙煎指数(重量減%)
Sample1:14.9%
Sample2:14.8%

仮定
2回目の焙煎(Sample2)の方が香りが良いと感じたわけであるが、これは1回目に発生したクラッシュ&フリックというRoRの大きな波打ちを、極力抑えるように火力調整したからだと思われる。
Rao氏の言う、DIPという操作である。

以下の2つのプロファイルを比べて頂きたい。

Brazil_500g_Sample1
Brazil_500g_Sample2

主な違いは1ハゼ開始以降である。
投入温度は同じだが、サンプル2の方が焙煎時間は少し長く、排出温度は少し低い。
これは経験から、焙煎指数を揃えるための直感的なバランス操作である。

操作内容が分かるように重ねたグラフが下記になる。
色の薄いラインがサンプル1、濃い方がサンプル2である。

Brazil_500g_Samples_重ねて解析

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焙煎の翌日、粉に挽いてカッピング評価してみた。
光の具合で写真の上では色合いに差がある様に見えるが、左右を逆に置くと明るい方が逆転することから、粉に挽いても見た目の差はないものと考える。

一方で、香りはサンプル2の方が甘く強く、サンプル1はロースト臭が少し強めに出ている

Brazil_Samples_珈琲粉

ブレイク前の様子はこんな感じ。
Brazil_Samples_Break前

ブラインドカッピングの結果

いつものようにカップの位置をグルグルと変えて、どちらのサンプルか分からないようにしたうえで、ブラインドカッピングとした。

味の差、フレーバー差は確実にあり1つは苦みが強めで微かな雑味も感じるのに対して、他方は心地よい酸味が残っておりロースト臭も少な目で、明らかにこちらがサンプル2だと思い、確認したところ、やはり正解であった。

ただしどちらの焙煎方法が正しいという話ではなく、そもそもこのブラジルはハイ~シティローストに焼いて苦みとローストの香りを意図的に強めているので、人によってはサンプル1の方が美味しいと感じるだろう。

~大事なことは、「こう焼けばこうなる」という理論が確かめられた、ということである~

Rao氏が言うように、極端なCrash&Flickは生豆の持つ繊細なフレーバーを損ねることは間違いなさそうである。しかしこのブラジルは普通に焼くと特に Crash&Flickが大きく出やすいのである。

なお、本格的にやるなら3つずつ同じ豆のサンプルを作って合計6個のカップをブラインドで全問正解できるか、で検証すべきであるが、今回はお店のものなのでそこまでは出来なかった。

そしてバッチ毎の多少のブレはあっても最終的にすべてのバッチを混ぜてしまうので均質化され、最終的には毎回同じ味に仕上がるのである。
Brazil_Samples_Blind_Cupping

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