コーヒー豆を焦げ茶色になるまで適当に焙煎するだけなら、それこそ百均で売っているような身近なものでも工夫次第でいくらでも出来てしまうし、まぐれで案外、美味しく焙煎出来てしまうこともあるかもしれない。しかしそういった簡易的なものでは絶対にできないこととして、うまくいった焙煎の再現という課題がある。これを、取り合えず Identical Roastと呼ぶことにする。
例えば、上記の例は昨日、僕が Cormorant CR600焙煎機を用いて、横浜のKOPE花伝カフェさんの豆を2回に分けて焼いたときのプロファイルである。バッチ量、投入温度を揃えて、さらにリファレンスとなる焙煎プロファイルをバックに表示させて、そのラインを辿るように火加減や風量を調節していく。そして、豆温度がターゲット温度になったら素早く排出して迅速に冷ます、ということをやっているが、重ねてみると、中点温度こそ少しずれているが、ほぼ同じラインに乗っていることが分かる。
この2例ではAUCは1回目が243、2回目が241である。これは実は狙って同じ数字に揃えてみた。
この例のように、AUCの値まで一致すると、さすがに重量減でも18.5%と完全に一致、香りにも何も違いが感じられない、完璧な Identical Roastが完成する。
なかなかここまで一致させるのは大変で、通常は0.1-0.5%程度の誤差は出るが、まぁ、飲んでわかるほどの差ではない。そしてArtisanを使えばこの程度の追い込みは、ほぼ成功する。
Identical Roastの実践で重要なポイントは、豆温度の測定開始点とも言える中点温度を揃えることである。中点に至るまでの下がり続ける温度は仮想のものであり、何の温度でもない。
そして中点温度を揃えるためには、投入時の生豆の温度まで考慮することが必要になる。
冬のログハウスは夜間には零度前後になることもあり、ログハウス内に置いてあった生豆は冷え切っており、朝一番にそのまま焙煎しようとするとなかなか思い通りにいかない。そこで最近は、前日から焙煎予定の生豆を暖かい室内に取り込んでおくようにし始めた。
ログハウスに暖房を入れておいて午後から焙煎するような場合は問題ない。例えば焙煎機に火を入れる前に生豆を投入して回してみたところ、ログハウスの室温とほぼ一致していることが確認できた。15.1℃と15.3℃である。
さて、この概念を煎り上手にも応用して、中点温度を狙いどおりにしていこう、というのが次の目的で、取り合えず、煎り上手の中に生豆を少し多めに放り込んで生豆の温度を計ってみたところ、やはり室温とほぼ一致している。まぁ、当たり前なのだが、実際にこうして温度計で比べると、やはり納得してしまう。
さて次は、煎り上手の予熱温度と生豆の温度の差が中点温度にどう影響するかを調べていきたい。
前提として投入する生豆の量は毎回ピッタリ70gとする。当然ながら生豆が冷え切っていると、焙煎器を同じ温度に予熱しても、中点温度は低くなるはずである。 豆の熱容量 vs 焙煎器の熱容量 である。ただし、そもそも熱容量の小さい煎り上手の場合、予熱しても、生豆を投入するために火から離すと直ぐに温度が下がり始めるため、素早く投入しなければ誤差が大きくなる、という問題がある。
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