Baked フレーバーについて

現在、余命僅かの実父の介護のため実家に滞在しており、当面その状況が断続的に継続する予定である。ということで現在、手元にある焙煎機は持ち込んだ「煎り上手」と Sandbox Smart Roasterのみ。もちろん珈琲器具、生豆の種類も限られているが、出来ることが少ない分、返って集中できることもあるかとポジティブに考えたいが、さて。

本日はSandboxを使って、コロンビア・ボルカニックという水洗式の豆を中深煎りに焙煎しようとした。ところが、プロファイルをいじり過ぎたからか、投入温度は十分に高かったのに、最初あまり温度が上がらず、途中で仕方なしに火力を少し上げたが最後までペースに乗れず、結果的に非常にだらだらとした焙煎になってしまった。具体的には以下のプロファイルを見て頂きたい。これは酷いね。
BakedProfile

早速これを試飲してみたら、予想どおり見事な Baked フレーバーとなっていた。
そもそも焙煎豆を見ると、Scorched豆がパラパラと混じっている。
コロンビア・ボルカニック・スコーチト

Scorched豆を取り除いたら一見、綺麗なハイローストだが、焙煎豆の香りを嗅ぐだけでもBakedフレーバーが出ていることがはっきりとわかる。

コロンビア・ボルカニック全体

ここで、折角なので Bakedの要因について少し考察してみたい。
下記はUCCの焙煎セミナーで教えている焙煎欠点の一部であり、これが一般的な解釈であると思われる。上記の写真を改めて見ると表面が焦げており、下記の定義の中では Facedに相当するか。

Baked(低温長時間焙煎)
 – 見た目の色が同様でも、カラメル化が不十分
 – 風味が抜けたポップコーンやシリアルのような感じ
Scorched(焦げ)
 – 投入温度が高過ぎることによる初期の焦げ
 – 黒いスポットが出来るが、焙煎後は判別が難しい
 – 浅煎りでもスモーキーなフレーバーが感じられる
 
Tipped(欠け、割れ)
 – 熱量過剰で最も構造が弱い胚が焦げること
 – ビスケットの風味やスカンク臭、焦げ臭など
 
Faced (豆の表面焦げ)
 – 投入量過剰で攪拌が不十分となり、豆表面が焦げる
 – 熱量が多過ぎて、乾燥した豆の表面が焦げる
Facedの要因は2つ書かれているが、今回の生豆投入量は通常と同じ100gであり、攪拌不十分というのは当たらない。では「熱量が多過ぎて」はどうか、というとこれも当たらない。むしろ熱が足りないから、こんなに温度上昇に時間がかかってしまった

一方、Scorchedの要因を見ると、「投入温度が高過ぎる」となっているが、これも当たらない。210℃での投入はごく普通で、通常はこれで焦げることはない。

そもそもRoRが最初から10度程度しかなく、そこから徐々に火力が下がっていったので、普通に考えたら焦げるはずはない。豆の排出時の温度も198℃とかなり低い。むしろ普通なら生焼けの温度であるが、20分という長時間焙煎によりしっかり bakeされて、実は豆を取り出す瞬間には2ハゼすら起きていた。

このことから考えられることは、豆全体の塊としての平均温度は低くても、一部の豆の表面は焙煎ドラムの接触温度に近くなっており、それが2ハゼを起こす220℃を超えていた、ということであろう。また焦げた理由は、いわゆる低温火傷と考えると分かり易い。

そしてこの場合、抽出したコーヒーのフレーバーは、とてもスモーキーでロースト臭の強いものになる。Scott Rao的には最もやってはいけない焙煎ということになるが、世の中にはこのような味を好む人も少なからずいるようなので、まったく珈琲焙煎は奥が深い。

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