お湯洗い焙煎はブラインドで判別できるのかの検証

少し前になるが、前から気になっていたお湯洗いの功罪について少し掘り下げてみた。

まずお湯や水で生豆を洗うことのメリット・デメリットを思いつく限り列挙してみる。

<メリット>
M-1 大半のチャフが取り除かれることで、特に片手鍋や手網焙煎する場合に散らかりにくい
M-2 欠点豆(虫食い豆、カビ豆、変に発酵した豆)を見つけやすい
M-3 ポストハーベストや生豆表面の汚れが取れる
M-4 雑味が少なくすっきりとしたマイルドな味になる(D-1と相反)

M-5 大手はやらないので、差別化しやすい

<デメリット>
D-1 味や香りの元となる成分(前駆体)が流れて、フラットな味になる
D-2 手間や時間が余分にかかるためコスト高になる
D-3 お湯や水を大量に使うため不経済、環境にも悪い

こうしてみるとメリットも結構あるようだが、大手業者が生豆を洗わない理由は、そもそも大量の生豆を洗ったり乾かしたりするには相当な設備が必要となり、コスト的に見合わないからだろう。

よってお湯や水で生豆を洗って焙煎するのは、手網や片手鍋で焙煎している個人や、ごく一部の小規模自家焙煎店に限られている。僕が知る限り、珈琲店としてやっているところは、いわゆるアームズメソッド系列店と、孤高の道を突き進んできた福岡の名店「珈琲美美」、そして美美に心酔されているという山梨の「バンカム・ツル」さんくらいであろうか。なぜか水洗い焙煎の店は見たことがないが、中途半端だからか。みんな結局、より手間がかかる50度のお湯洗いをするか、通常焙煎にするか、と両極端に分かれていると思われる。


先日、FB Groupを通じて海外の個人ロースターにも少しサーベイしてみたら、海外では洗う人はますます少数派のようで、なかに1,2名、エチオピアの儀式に習って洗っている、とか、チャフが散らかるので洗うという人はいたが、少なくともお湯洗いではない。日本では生豆をお湯で洗う人がいると伝えたらかなり驚かれり、茶化されたりしてしまったものである。


さて、前置きが長くなったが、今回は上記 M-2 の影響をなるべく受けないように欠点豆がほとんど見つからない高品質な豆を使って、焙煎プロセスの違いでどのような差が出るかを検証した。

生豆:タンザニア AA トップ イエンガ (ニュークロップ、Q Grade Point: 84.83点)

焙煎:下記の3パターンで、CR600e焙煎機を使って全てシティローストに焙煎

 ・通常焙煎 水洗い焙煎 ・50度お湯洗い焙煎

検証方法: ブラインド・カッピングで3種類の珈琲を当ててもらう

生豆は200gずつ用意。

焙煎機はもちろん、Cormorant CR600です。
今回は電気式のCR600eを使用しました。

他の検証者には、焙煎メソッドを伏せた状態の豆を送付して、各自、適当なタイミングでブラインドカッピングして当てて頂いた。

結論を先に書くと、僕を入れて4名で検証して、3名が全問正解、残り1名は①、②が逆で③は正解という結果であった。下記のコメントを見て頂きたい。 


自分だけならさておき、SNSで募って適当に手を挙げて頂いた3名がここまで正解してくれるとは、なんだかちょっと感動してしまった次第。特にお湯洗いと水洗いも、なんだかはっきりと区別がついてしまったことには驚きであった。次はナチュラル精製の豆でもやってみようと思う。


それにしても、日本人は凝り性、清潔好きで、派手な酸味よりもマイルドなコーヒーを好むといった嗜好を持つ人が多いのか、お湯洗い焙煎という市場はニッチながら国内には存在してきた。特に深煎り+ネルドリップとの相性が良いようである。そして今やネット販売や個人焙煎される方達の中に静かに流行ってきており、裾野が拡大してきているように思われる。一杯のコーヒーにどこまで手間をかけるのか、まことに不思議な文化ではある。

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