生豆の水洗い、お湯洗い

大吟醸珈琲だとかアームズ焙煎だとか言って、珈琲生豆を水やお湯で洗ってから焙煎するという手法があるが、大規模ロースターにとってはほぼ無理なやり方なので、そういった大手は黙殺するためか、あくまで際物扱いとなっているように思う。しかしごく小規模なロースターや、個人で焙煎している人達の間では少なからず採用されている方法である。伝説の珈琲職人であった珈琲美美の森光宗男さんが水洗いに拘っていたことは有名であるが、最近の珈琲店でこのような手間がかかることをしているところがいったいどれくらいあるのであろうか。実際、一度やると確かに気になるほどの汚れが取れることが分かる。チャフもかなり一緒に取れるので、キッチンで手網や手鍋を使って焙煎している人達にとっては、レンジ回りの散らかり方が少なくなるメリットも大きい。
コロンビア水洗い

しかし、濡れた生豆はくっついてしまい焙煎機に投入するのが難しくなるので、今まで僕はほとんどやってこなかった。しかし物は試し、そもそも味にどれほどの変化があるのか確認したく、有機栽培コロンビアの生豆を使って、同じ分量を同じ焙煎度で焼いて、水洗いの有無の効果を調べてみた。CR600で水洗い焙煎を行うのは初めてであったが、投入時に糞詰まりそうになったので、少ししゃもじの持ち手側で突いてやると、なんとかドラムに落ちていってくれた。

焙煎の翌日、一応真面目に、コーヒーミルに入れる前に同じ豆を少し入れて捨てて残存粉をなくしてから挽く、という作業までして、一人カッピングしてみた。

まずドライの香りを確認したところ、通常焙煎の方がはっきりと香りは強い。しかし、これは焙煎後1日しか経過していないので、数日経過したらまた状況が変わるのかもしれない。
コロンビア水洗い有無カッピング

肝心な液体にしたときの味わいであるが、両方ともコロンビアらしいコクと酸味、それに甘い余韻を感じるのは共通であるが、通常焙煎の方は冷めてくるとウッディなフレーバーが混じり、雑味のようでもある。一方で水洗いした方は、冷めてきてもずっとクリーンカップのままであった。これが水洗いの効果なのだろうか。

本日さらに、エチオピア・イルガチェフェ・ナチュラルの豆を使って、今度は50度のお湯洗い、いわゆるアームズ方式で焙煎してみた。
アームズ準備


お湯の温度は、先日かったデジタル温度計できっちり50度にしてから生豆を投入。お米のようにグルグルと研ぐと、さすがにナチュラル精製の豆からは大量にチャフが剥がれ落ちる。
イルガチェお湯洗い前後

ちなみに、水切り後にどれくらいの水分が残っているかであるが、ごらんのとおりかなり頑張って脱水しても、23g (6.8%)程度重量が増えている。この水分は焙煎時にはドラムの中で大量の水蒸気となるので、水抜きプロセスに多少の影響が出るはずである。

さて、お湯洗い焙煎で僕がいつも気になってしまうのは、豆面が今一つ綺麗に伸び切らない、ということである。通常、イルガチェフェのナチュラル精製豆は、いとも簡単に皺が伸びてツルツルの綺麗な豆面となるが、お湯で洗うったものは、やはりちょっとくすんだ感じになっている。
イルガチェ・アームズ焙煎豆


アームズ方式で焼いたイルガチェフェであるが、焙煎直後に飲んだところ、いつもより少し香りが抑えられて上品かな、という程度の差で、まだ本領を発揮しているとはいえない状態であった。

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