最近、超高速ノルディックローストに関する質問や問い合わせが度々くるようになったが、この焙煎方法は一種の偶然の発見であり、こんな焙煎が成り立つはずがない、と思われている方のためにも、なぜこれでちゃんと焙煎出来るのか、なんとか証明したいし、自分としてもこれが最善なのか深堀していく必要があると感じている。
そこで今回は短時間焙煎の限界を探るため、煎り上手を使って 10粒ローストに挑戦してみた。選んだ豆はペルーの水洗式の生豆でニュークロップである。もっとも火が入りにくいタイプの豆でもある。
10粒であれば予熱次第でどんな高速焙煎も意のまま、200度に数秒で達することも可能というわけである。10粒だけなので、ここはポジティブ・ハンドピックによりガタイのよい豆だけを選別してみた。以下がテスト内容のサマリーである。
Take-1: バッチサイズは10粒、200度で投入、火力は強火
Take-2: バッチサイズは10粒、160度で投入、火力は強火
Take-3: バッチサイズは10粒、160度で投入、火力は弱火~中火
Take-4: バッチサイズは40g、超高速ノルディック・ロースト (220度で投入, 火力は強火)
<Take-1>
そもそも10粒では煎り上手の熱容量の方が大きくて豆投入による温度下降は生じず、200度の予熱は10粒に対しては高過ぎであった。入れた瞬間からどんどん温度が上がり、どんなに攪拌してもあっと言う間に焦げ出したので、1分半ほどで取り出したが、アルチザンは反応せず記録に残すことも出来なかった。明らかに焦げており、割ってみると当然見事なグラデーションであった。失敗。
<Take-2>
投入温度をグッと下げて160度としたが火力は強めのままで、1ハゼ開始までどこまで短縮できるか頑張ったが、Take-1の失敗から、ちょっとビビってしまい、排出が少し早過ぎた。
まあまあ均一ではあるが1分40秒では流石に浅過ぎた。
割ってみるとグラデーションも見える。火が入り切っていない。これも失敗。
プロファイルはこんな感じで、投入直後から豆温度は上昇している。
<Take-3>
今度は、投入温度は160度のまま、弱火で慎重に焙煎してみた。
1ハゼ開始まで2分9秒と短いが、超高速ノルディックよりは遅い。トータルも3分である。
これくらい時間をかけると10粒でもかなり綺麗に焙煎できる。
しかも、こころなしか、通常より大きく膨らんでいる。
ただ、超高速焙煎よりも長い時間をかけたのでは、あまり意味がない。
プロファイルを見ると、初っ端に一気に熱が入っている様子が見える。
<Take-4>
そして最後にいつもの超高速ノルディック・ローストをやった。
ただし、今回は敢えてサイズがとても小さい豆を10粒ほど意図的に混ぜて、これらがどういう色付きをするのか確認してみた。
バッチ量は40gで、これくらいあると豆投入によりちゃんと温度下降が生じる。
焙煎時間は2分40秒。いつものように220度で投入して、最大火力で熱し続けて、再び220度に達したら火を切って、余熱で230度近くまで振り続けてから排出する。
焙煎した豆をお皿に取り出すと、見た目は普通のミディアムローストの風情である。
では小さな豆がどうなったか。
さらに4粒ほど他の豆より大きなものも混じっていたので、これらを分離してみると、やはり豆の平均的な色づきは、大きな豆 > 普通の豆 > 小さな豆 となっている。
これはたぶんこの焙煎方法の限界であり、超短時間焙煎の宿命だと思われる。
以前のブログに書いた通り、ある程度のバッチ量があり、10分前後かける普通の焙煎では、塊として挙動するため、小さい豆でも貝殻豆でも、通常のサイズの豆と同じ色に焙煎される。
しかし超高速焙煎では流石にこれは成り立たないらしい。
超高速ノルディックローストのプロファイルはこんな感じである。
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