今回は、50度のお湯で洗ってから焙煎することを趣旨とするアームズメソッド焙煎に関して私見を述べたい。
アームズメソッドは焙煎マニアの間では既に広く知られる手法であり、チャフが減るという利点が特に手鍋や手網での焙煎と相性がよいことは以前にも書いた。さらに言うなら、手網のように生豆から出る水蒸気を留めることができない道具では、水分量を多くすることは熱の入り方が改善すると考えられ、その点でも良い組み合わせと言えよう。
そもそもお湯洗いという手法は、珈琲美美の故森光氏がエチオピアの風習をヒントに編み出したという話で、森光氏に傾倒している方にはお湯洗い焙煎をされる方が多いと認識している。一方でアームズ焙煎は、日本焙煎技術普及協会という団体がこれをよりビジネスとして普及させようとしているものであり、講習会や動画などでこの手法の裾野を広げた功績は非常に大きいと思われる。
一方でこのウェブサイトを見ると、かなり過激にお湯洗いの重要性を謳っており、その説明には少なからず突っ込みどころがあるが、これを読むとなんとなくお湯洗い信者になってしまうのも理解できる。
先に述べておくと、僕自身は特にお湯洗い派ではなく、お湯洗い焙煎の良い面と悪い面を自分の実験などを通して冷静にみている。
さて、今日はそのお湯洗い焙煎について、どんな具合に進むかを写真に残してみたので紹介したい。
まず生豆を計量する。今回はブラジル・ブルボン・クラシコの新豆を使い、400gの焙煎豆を得たかったので、スタートは500gとした。
この豆は非常に丁寧なパルプド・ナチュラル精製がされており、ほとんど欠点豆が見当たらない。目を凝らしてやっと虫食い1粒、未成熟気味の豆が数粒という感じ。500gが497.5gに減った。
お湯に投入後に、生豆を研ぐと最初は写真のようにお湯が濁り、その後水洗いすると何回水を変えてもチャフが出続ける。洗って、浮いてきたチャフを取り除いて、水を変えて、を10回ほど繰り返して、キリがないので取り合えずそこで終わりとする。ちなみに水が汚れるのは最初だけで、あとはひたすらチャフが剝がれていく。
水を含んだ生豆をある程度乾燥させるためにまず野菜の水切りを使う。この時点で535.4g。その後は仕上げに焙煎豆クーラーに入れて10分ほど乾燥させる。最終的にこの時点で519.3gとなった。元が497.5gなので 21.8gの水分が加わった。パーセンテージでいうと 4.3%ほど増えた計算となる。元の水分量が仮に12%だとすると16%ちょっとになったことになり、生豆の保存においてはあり得ない水分含有量である。
乾燥に用いた道具は以下のようなものである。
洗った豆をCR600焙煎機でシティローストに焙煎したところ、422.2gとなった。497.5gからなので、重量減が15.2%である。お湯洗いした焙煎豆は、通常焙煎のものに比べて艶が少なくなる。お湯洗いすると、浅煎り~中浅煎りでは豆面が非常に悪くなるため、美味しそうに見えない、という難点があり、大半の方が中煎り以上に焙煎するものと思われる。
ちなみにこれだけ洗ってもやはりチャフは出る。ただし通常の 1/3程度か。
最後に、いつもお湯洗いオプションを選択して焙煎豆を注文してくれる顧客からこんなコメントがきたのを紹介したい。これが実に興味深いので原文のままどうぞ。
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<先日のI氏からの注文時のコメント>
試飲しましたが、湯洗いしていない豆は、まろやかさと深みを感じました。
そして頭痛が起きませんでした。私は豆によってなぜか飲んだ後に、
頭痛が起こるとがあります。それは豆によってのようです。
無農薬と謳っている豆でも起きた事があります。
それがアームスメソッドの豆を飲んでからは、頭痛は起こらなくなりました。
湯洗いによって、頭痛の原因なるものが除去できたのかと推測したりしますが、
どうなんでしょう。
豆のカビが原因なのか品質に問題があったのか定かではありませんが、
結構、こだわっている方の豆でもそうなる事があります。
それゆえ、アームズメソッドの豆だとならないので、暫くそればかりにしていましたが、
KazuhiCoffeeさんの欠点豆やカビの除去に大変こだわっているのを知り購入させて頂いております。もちろんKazuhiCoffeeさんの豆で頭痛は起こった事はありません。ですが安全パイで湯洗いを選択していましたが、今回のマンデリンは確実にノーマルの方が美味しいと感じるので、今回はノーマルで飲ませて頂きます。
湯洗いした豆に感じる事ー飲みごたえは総じてノーマルに比べると深みやまろやかさは軽減している感じ。ただ飲み後の口中がスッキリしている。体に良いか悪いかで判断すると湯洗いした豆の方が体調には良い感じがする。ただの幻想かもしれませんが。
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