LE NEZ du CAFE

LeNezDuCafe木箱

「チョコレートをイメージする甘い香り。柔らかい飲み口から、カシスやピーチ、マスカットのような甘さが広がる。アフリカならではの独特な質感を持ち、エキゾチックで赤ワインやココア、スパイスを想わせるコクと力強い苦みの余韻」
これは、ウォッシュト精製のウガンダ・アフリカンムーンに対する、某有名な珈琲屋さんによる説明である。どうだろう、どんな味のコーヒーが想像できるだろうか。
僕も同じ産地・精製の珈琲豆はしばしば焙煎してきて、確かにアフリカらしい力強さがあり、リピーターの多い人気の豆であるが、とてもここまでの説明は出来ない。ちなみに僕はこれを通常ハイローストに仕上げて以下の説明を付けて販売している。
「甘みとコクがあり、アップルのようなジューシーさを感じる、アフリカ産らしい力強い味わいのコーヒー」
実際、カッピングの表現は自由で多彩であるが、多くの人に的確なフレーバーを想像してもらう表現はとても難しい。

例えば、未知の生豆を買う際はまず販売会社の説明を見るが、現実には焙煎度が異なると全く違うフレーバーになるので、説明だけで期待どおりの豆を選ぶのはなかなか難しい。親切な会社では焙煎度毎に分けて期待できるフレーバーを説明してくれており大変参考になる。しかし、それでも実際に焙煎してみると、なかなかその通りにはならないものである。

前置きが長くなった。
さて、そんな中でもやっぱりなにか基準は欲しい。フレーバーは嗅覚により感じるものが大きいとされる。鼻の奥の嗅細胞に届く香りは鼻腔からだけでなく、飲み込むときに口の内側からも届く。いわゆる口中香である。
ということで思い切って Qグレーダー試験で使うことで有名な Le Nez Du Cafeを購入してみた。

元々はワインのを学ぶ人のために、Jean Lenoir氏により1981年に開発された Le Nez Du Vinという香りのサンプルがあり、その16年後にコロンビアFNCのリクエストで、このコーヒー用サンプルが作られたとのこと。今はウィスキーやアルマニャック版もあったり、少ないサンプル数の簡易バージョンもあるが、コーヒーに関してはこれ一択である。

36本の香りのビンがフランスらしいこ洒落た木製ケースに入っており、なかなか所有欲をくすぐるものであるが、そんなことより早速、順に香りを確認していく。すると、とてもハッキリしたものと、非常に弱い香りで判別が難しいものがあることが分かる。

例えば、9番のCoriander seeds, 14番のBlackcurrent-like, 20番のLether, 29番のRoasted hazelnutなどは、本当に微かな香りで、もしかしてサンプルが古くて香りが抜けているのではないか、と疑いたくなってしまうほど弱い香りである。
実はこの点で、やはりフランスから直輸入すべきであったかと少し後悔している。今回は楽天モールで63,800円で購入した。ネット購入先は別会社であったが、納品元は「日本クリエイティブ株式会社」というところであった。
これらの香りを記憶していくためには、なるべくはっきりとした香りが欲しい。気を取り直して、取り合えず本物のCoriander seedsの粉ヘーゼルナッツを買ってきて、それと比べることにした。

GABANのコリアンダーパウダーと9番のサンプル (Coriander seeds)

LeNezDuCafeコリアンダー

Coriander seedsは本物もとても上品で弱い香りで、確かにこれならサンプルの香りも弱くてしかないか、という感じである。しかし香りサンプルの付属の冊子にある説明を見ると、dominant scent (支配的な香り)とあり、むしろハッキリした香りであるはずである。

LeNezDuCafeコリアンダー説明

無塩ロースト・ヘーゼルナッツと29番のサンプル(Roasted hazelnuts)
LeNezDuCafeヘーゼルナッツ

一方で、ローストしたヘーゼルナッツは噛んでみると独特な香りがあり覚えやすいが、香りサンプルはとても弱々しく、言われてみれば確かに同じ香りかな、という感じである。

冊子には、その香りが感じられるコーヒーの例が出ている。例えばバターの香りのところには、特にコスタリカ産にこの香りがあるとあるので、自分で焼いたコスタリカのコーヒーを淹れてその香りを探してみた。 う~む、あるようなないような、という感じである。香りのサンプルは1つの香りで単純であるが、コーヒーの方はミックスでありその中の微かな香りを見分けるのはやはりかなり難しい。

コスタリカSHB・セントタラス・ガンボア農園のミディアムロースト
LeNezDuCafeバター

LeNezDu
Cafeバター説明1
LeNezDuCafeバター説明

さて、ここからどう勉強していくか。

まずは繰り返し繰り返し、香りのサンプルを嗅いでは記憶することで、ブラインドですらすらと区別できるようにしたい。

それにしても木製ケースのデザインは秀逸である。付属の冊子を挿し込むことでスライドする蓋がロックされるようになっているのである。パズルみたいで面白い。フランス人のセンスに脱帽である。

LeNezDuCafeマニュアル

<追記> 2022/4/14
やはり香りのサンプルが弱すぎるものがあることが気になり、販売元の日本クリエイティブに問い合わせたところ、「販売元に確認してもらうので着払いで送り返してください」と返答が来たので、昨日すぐに送り返した。ということで実は現在は LE NEZ du CAFEは手元にない。

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