今回のツアーは2泊3日の旅程で農園2か所の訪問をするものであった。真冬の日本から常夏のベトナムに行って、またすぐ戻ってくるということで、持ち物に関しては少々悩ましかった。
成田からVietjet便でホーチミンの待ち合わせ場所に向かった。到着したら素早く出ようとオプション料金で前列4番目の席を確保したが、機内持ち込みOK(7Kg以内)に収めたスーツケースは、別にリュックを背負っていたため強制的に預け荷物にされてしまった。乗った便は出発が1時間以上遅れるし、預けた荷物は最後まで出てこなかったりで、待ち合わせ時間は過ぎているし、初っ端から大汗をかいてしまった。ちなみに機内では有料の機内食を頼まない限り、サービスでは水一つ出てこない。またいろんな有料オプションは事前のネット予約とその場での注文では値段に大きな差がある。LCCとはこんなものか。初体験でいろいろ学べた。
短パンのベトナム慣れした姿の人が黒田さん
それはさておき、ホーチミンからは主催の黒田さん、通訳のフーさん、運転手、それにツアー参加の5人の計8名で、最初の目的地であるバオロクへに向かった。僕が遅れたため出発は4時過ぎ、途中何回かトイレ休憩を挟んで22時頃にやっと到着。ホテルに向かう前に夕食に食べた牛肉のフォーの優しい味わいがやけに美味しかった。
バオロクではパオのようなドーム型の素敵な個室ホテルが用意してあった。バオロクの夜は長袖でも少し寒いくらいであった。ちなみにホーチミンは余裕で30度超えの暑さ。
お馴染みのバイクだらけの風景。
実際に見るとやはり面白い
ベトナムといったらフォーだ。
付け合わせの野菜をたっぷり入れて食べると
なんだか元気が出る
ドーム型のホテル
一人に1ドームなんて素敵だ!
ここは今や日本一有名になった感のある農園で、ロブスタ種のコーヒーに最大の愛情を注いで別格の品質のファインロブスタを生産している。オーナーのTOIさんの人懐こい人柄と今回のツアーを用意してくれた8コーヒーの黒田さんの精力的でフレンドリーな活動の賜物であろう。
ここではまずウェットミルを見せてもらった。運ばれてきたコーヒーチェリーを投入口に投入すると、ベルトコンベアでどんどんと運ばれてミルにかけられ、大量の水で洗いながら、ミューシレージのついたコーヒー豆とカスカラに分離される。それぞれ一定量が溜まると手作業で容器に移して積み上げていく。これらは最終的にフリーウォッシュト、ハニー、アナエロビック精製の生豆となる。
コーヒーチェリーは床の投入口から吸い上げる
未来農園では農薬は使わず、肥料はカスカラを発酵させたものを使っているそうで、オーガニック認証は取ってなくてもまさにオーガニックな生産をやっていた。下の写真はTOIさんが試行錯誤の上、作り上げたという、アナエロビック精製のタンク。かなり加圧されている様子。
選別工程、乾燥工程
乾燥工程の前に、既に乾燥した豆の最終工程である選別の過程を見せてもらった。電子選別機を導入しており、その後にさらに二人で目視によるハンドピックまで行っている。電子選別された時点で既に相当に綺麗だが、ハンドピックの女性達は結構なスピードで次々と欠点豆を弾いていた。
完成品を手に取ってみると、形、色や大きさも揃っており実に綺麗で、従来のロブスタとは完全に別物だ。なお、弾いた欠点豆は国内消費に回されるということで、なに一つ無駄にしていない。
お昼はTOIさんのご自宅に招いて頂き、色んなロースターさんが焙煎したトイさんのロブスタ豆を試飲させてもらった。そしてお昼は丸ごとチキンなどの大ご馳走だった! TOIさんありがとう!!
そして、なんとその後は各自にベッドが用意されていて、想定外の「みんなで シエスタタイム!」
南国ベトナムの心地よい日差しの中、あまりの気持ちよさに思わず30分ほどウトウト。最高のおもてなしであった。
裏庭には可愛い犬が二匹。チンみたいな顔の犬。
農園にも沢山、犬が放し飼いされているが、番犬を兼ねているらしい。
さて2時間ほど休んで多少暑さが和らいだ頃あいに、いよいよ農園へ。
ロブスタ農園
僕にとっては初めてのコーヒー農園。とにかくなにをみてもワクワクしてしまう。
ロブスタの木は背が高い、とかってに想像していたが、実際はそんなことはなく、普通に手を伸ばせばチェリーを摘み取れる高さに揃えてある。各枝には一度しか実が成らないので、収穫後の枝は切って、脇から延びてきた新枝を来年に残す、というのを繰り返すそうである。
細い吊り橋を超えて農園側にいくと、バナナやジャックフルーツなど南国の果物も実っている。
花も咲いていれば、まだ青い実もあれば、完熟の実が成っている木もある、という状態なので、完熟豆だけを摘み取るためには傾斜地をあちこち移動して作業する必要があり、いかにも大変そうである。
ロブスタの実はむっちりと堅く締まっていて美しい。
爪を立てると中から2つの種子、つまりコーヒー豆が現れる。
よく熟れた実の果肉を口に含むと微かに甘味は感じられるが、水分はほとんどなくカサカサの果肉である。
未来農園では、この高品質なロブスタ豆を、注文に応じてナチュラル、フリーウォッシュト、アナエロビック・ナチュラル、アナエロビック・ハニーなど精製方法を変えて出荷している。
需要はとても高く、作る端から売れてしまうそうである。
というか発注分をどんどん作っているが生産が追い付いていないようだ。
ロブスタでここまで出来る、という大きな可能性を秘めたまさに未来農園であった。
こちらはダラットという町にあるアラビカコーヒーの農園である。
この日は朝から強い日差しの晴天であったが、さすが標高1600m、長袖でも涼しくとても気持ちが良い。
農園に到着後、まずダラット産のコーヒーを振舞ってくれた。THA5という最新の品種らしい。かなり浅めに
焙煎されたコーヒーは南国の柑橘類を思わせるフレッシュな酸味が感じられてとても美味しかった。
この農園の来てまず驚かされたのは、そこが一面の松林である、ということである。
まるで日本の海岸等でみる松林のような感じである。
松の木の間にコーヒーの木が植えられている。えっ、これだけ? と思ってしまったが、もちろんそんなわけはなく、そこからずんずんと奥に進むと、どんどんとコーヒーの木の密度が高くなり、いつしか一面コーヒーの木だらけの場所に辿り着いた。20ヘクタールの土地のうち15ヘクタールほどコーヒーの木が植えられているとか。
ブラジルなどの農園に比べるとこれでも小規模なんだろうが、十分に広い。機械が入らない場所であり、収穫は全て手摘みして人力で運び出しているので、人件費が高くては成り立たない。どうやら国内に54種類いるという少数民族の労働力に頼るところが大きいらしい。
ここの農園は、お馴染みのハイブリッド種、カスティージョ種が今のところ9割だが、現在品種改良中のTHA-1、THA-2といったよりフレーバーの良いものに置き換えていっているそうである。
イエローカツーラの木が所々生えていて、黄色く熟した実を齧ってみるとカスティージョよりも甘い。
さらに一部、タイから輸入したというゲイシャ種、オレンジブルボン、ティピカ・ロングなんて木も植えてあったが、これらは実験栽培とのこと。
ユンさんの素晴らしい探求心に、この農園にも大きな可能性を感じた。
この後、アナエロビック(?)の発酵過程を見せて頂いたが、ビニールをかけてあるだけなので、嫌気性発酵とは言えないように思った。
発酵槽の中にレモン酵母を添加しているそうで、ユンさんはディープウォッシュト精製と言っていたが、その過程は見ることが出来なかった。
アフリカンベッド
ここも未来農園同様、乾燥にはアフリカンベッドを使っており、パーチメントのついたコーヒー豆はかなり厚めに敷いてある。これを熊手で時々掻き混ぜながら1か月かけて乾燥させるとのことだが、理由を訊いたら、急ぐとパーチメント部分だけが先に縮んで割れてしまい、その後の保存性が悪くなるから、中身の生豆とパーチメントが同時にゆっくり乾燥するように時間をかけているとのこと。
その間、奥さんが見張りも兼ねてずっと横に泊まり込んでいる。
毎日おいしいコーヒーを2ポット分淹れて飲むそうで、なんだか楽しそうな様子ではあったが、実際は大変なんだろうな。
なにしろ超充実の3日間であった。
短期間でロブスタ、アラビカの農園の主要部分を見学できるという理想のツアーを用意してくださった 8コーヒーの黒田さんには大感謝である。
これもひとえに、黒田さんが頻繫に農園に足を運び、取引を拡大させながら、農園のオーナーの方達との深い絆を築いているからこそ実現できる内容だと思った。
余談ながら、今回の旅で僕はベトナムがすっかり好きになった。食べ物は美味しいし、物価も安い。季節を間違えなければたぶん天気も良い。言葉は全く通じないけどGoogle翻訳があればなんとか一人旅も出来そうである。
ベトナムは未だ現金社会で、そこらじゅうで札びらを数えている姿がなんとも懐かしい感じがする。
ベトナムドンは1000ドンが約6円相当で、コインがないため札種が多くて、慣れない者には実に支払いが難しい。
例えばバインミーが74000ドン、とか書いてあると、ゼロを3つ取って6を掛ける、と頭の中で計算しながら支払う。言葉は全く分からないので、価格はスマホの電卓に数字を入れてもらうと簡単だよと、あとで教えてもらった(^^;
ここもいずれ、急激にQRコード決済に移行してしまった中国のようになるのか。
出来ればずっとこのままでいて欲しいなぁ。
完
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